2025年2月、世界最大級の物流企業であるDHLグループは、中東地域に総額5億ドル(約570億円超)を投資する計画を正式に発表しました。サウジアラビアとUAEを中心に、物流拠点や輸送能力の強化を図るもので、同地域をグローバル貿易の主要ハブとして位置づける戦略の一環です。
投資の具体的な内容
- ハブ・ゲートウェイ施設の整備
航空貨物ネットワークを拡充し、国際便のリードタイム短縮を実現。サウジアラビアとUAEに新たな拠点を設け、地域全体の結節点を強化します。 - 輸送能力とフリートの拡張
DHL Global Forwardingによるフリート増強、地域航空会社との合弁事業(JV)を通じて貨物輸送キャパシティを大幅に向上。 - 倉庫・サプライチェーンの高度化
DHL Supply Chain部門がAIや自動化技術を導入した次世代型倉庫を整備し、在庫管理やオペレーションの効率化を進めます。 - ラストマイル配送の強化
2024年に買収したAJEXを活用し、Eコマース需要に対応した即日配送・翌日配送サービスを拡充。
業界への影響
DHLの投資は、中東が今後「東西を結ぶ物流ハブ」として一層の地位を高めることを示しています。紅海ルートの不安定化や、欧州・アジアを結ぶ代替航路の模索が続く中で、中東の拠点強化はサプライチェーンの安定化に直結する動きといえるでしょう。
特に、Eコマース需要の急拡大と製造拠点の多極化を背景に、迅速で柔軟な物流網を持つ地域が競争優位性を握るとの見方が強まっており、今回のDHLの動きは他の物流大手にとっても参入加速の契機となる可能性があります。
総括
DHLの中東投資は、単なる拠点拡充に留まらず、同地域をグローバル物流の要に押し上げる戦略的布石です。サウジアラビアの「Vision 2030」やUAEの貿易自由化政策とも連動しており、民間企業と国家戦略の双方からインフラ整備が進むことになります。
物流業界にとっては、中東を「通過点」ではなく「新たな供給網の中心」として活用する発想転換が求められる局面といえるでしょう。
弊社としても、中東を将来の国際サプライチェーンの要衝と捉え、変化する物流環境の中で、お客様の輸送ルート多様化やコスト最適化をサポートしてまいります。