2025年2月、国際物流業界にとって引き続き大きなリスクとなっているのが、紅海ルートの不安定化です。紅海はスエズ運河と並び、欧州・アジア間を結ぶ主要航路であり、世界貿易にとって欠かせないルートです。しかし、同地域では依然として緊張が続いており、海上輸送の正常化は当初の見通しよりも長期化する可能性が高まっています。
政治リスクと航行制限
フーシ派(ホーシ)による攻撃リスクは依然として存在しており、一部では「制限を緩和する」との声明もありましたが、実際の航行安全性は確保されていません。さらに、米国前大統領トランプ氏によるガザに関する発言が中東情勢に新たな緊張をもたらし、海運業界の期待を一層冷やす結果となりました。
船会社の対応
世界的な船会社であるMaerskをはじめとする大手キャリアは、依然として紅海経由の航行再開に慎重です。現時点では「2025年前半での正常化は困難」との見方が強く、最短でも中盤以降、場合によっては年末まで航路の混乱が続く可能性が示唆されています。これにより、アジアから欧州に向かうコンテナ輸送の多くは、喜望峰経由(アフリカ南端)ルートへ迂回しており、輸送日数の増加とコスト上昇が続いています。
物流業界への影響
紅海航路の不安定化は、国際物流業界に以下のような影響を与えています:
- 輸送リードタイムの延長:アジア発欧州向けの輸送が10日以上長引くケースも発生。
- コスト上昇:燃料費・船腹需給逼迫により、海上運賃が高止まり。
- サプライチェーンの不確実性:安定的な輸送ルートを確保できないことが、メーカーや小売業者の調達計画に直結。
展望
短期的には、政治的安定が見通せない中で、海運業界はリスク分散と代替ルートの確保に注力せざるを得ません。中長期的には、紅海ルートの安定化が実現するまで、航空貨物やインド洋経由の輸送の活用が広がると考えられます。物流プレイヤーにとっては、顧客に対するリードタイムとコストの「見える化」と、柔軟な輸送手段の提案が求められる局面となっています。